第15回 IP電話 | 2003年8月29日 |
固定電話市場に殴り込みをかけているのがIP電話です。別名インターネット電話とも呼ばれますが、この電話は電話交換網を使わずにインターネットの回線経由で音声を伝送するものです。IP電話の特徴は通話費用がとても安いことで、同じIP電話会社の加入者同士なら無料、国内の固定電話なら3分7.5円が一般的です。しかし、安いにはそれなりの理由があります。それを理解して使うのが肝要です。
インターネットにはIPアドレスというものが存在し、これを使って通信元と通信先を特定する。現在広く使われているのがIP4と呼ばれるもので、4バイトの長さを持ち、12.34.56.78というようにピリオドで区切った0から255までの数字4個であらわします。インターネットに接続された装置には固有のアドレスが割り当てられます。このIP4は原理的に4,294,967,296通りですが、特定のアドレスが使用できないのでこれより少なくなり、接続されている全ての装置にユニークな番号を割り当てられない可能性があるのでIP6と呼ばれる拡張されたアドレスが検討されています。通常、IPアドレスはインターネットに接続する都度自動的に割り当てられるようになっており、インターネットユーザーはそのアドレスを認識する必要がありません。
IP電話ではこのIPアドレスを使って通信を行います。すなわち、ユーザーごとに固定のアドレスが必要となります。日本では、このIP電話に加入すると050からはじまる電話番号が付与されます。そして、この電話番号はそれぞれのIP電話会社で特定のIPアドレスに変換されるようになっています。しかし、この番号で呼び出せるのは自分が加入しているIP電話会社と契約している電話のみです。IP電話会社同士の提携により、無料通話可能な範囲が増えていますが、NTTの加入電話からこの番号をダイアルしても接続できません。
基本的にIP電話でかけられるのは同じIP電話会社のIP電話とNTTの加入電話のみとなっています。携帯電話やPHSにはかけることができません。また、110番、119番などにもかけることができません。IP電話を利用するにはIP電話会社が指定するIP電話対応モデムやIP電話アダプターと呼ばれる装置を入手する必要があります。これを設置し、この装置経由で電話機とNTTの回線を接続します。電話機からダイアルされた番号により、IP電話対応モデムやIP電話アダプターと呼ばれる装置がインターネット経由で接続するかNTT回線経由にするかを自動的に判定するようになっています。すなわち、自分の住んでいる地域への電話、携帯電話やPHS、110番や119番など、そして0120など電話会社のサービスにはNTTの回線が使用されます。IP電話は市外通話で、相手が固定電話の場合のみになります。携帯電話の普及から携帯電話にかける場合が多い場合、IP電話は無意味になります。
IP電話サービス会社の競争が激化しています。あたかも電話代が無料になるようなキャッチフレーズとIP電話対応モデムを無料で提供し、数ヶ月の基本料金をタダにする宣伝をしています。しかし、これまで説明したように、通話できる相手が市外の加入者電話のみですから、IP電話はNTTの回線に置き換えられません。また、電話回線がないとADSLで接続できません。NTTの回線は必要になるのです。IP電話は遠距離電話を安くするだけなのです。
IP電話は音声をディジタルに変換し、そのデータを区切ってインターネット経由で伝送します。インターネットはどのルートを経由するかはわかりません。すなわち、送出された順番でデータが受信できる場合は問題が無いのですが、一部のデータの伝送に時間がかかったり、データに誤りが発生して再送されたりすると音声が途切れる可能性もあります。音質が気になるところですが、実際に使った範囲ではまずまずで、もしかすると携帯電話よりも良いかもしれないといったところです。
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