こだわりの連載技術エッセイ
第4回 GPSって何だ?(3.信号と受信機) 2003年5月6日

GPS衛星からの電波はスペクトラム拡散と呼ばれる通信方式で、地球を回る24個の衛星が全て同じ周波数を使い情報を送信しています。 同じ周波数なら混信するのではと思われますが、この通信技術、別名をコード分割通信方式(CDMA)と言うもので、 全ての衛星が異なるコードを使用しているために混信することなく特定の衛星からの情報を受信することが可能になります。 このCDMAは携帯電話でも使われているものです。スペクトラム拡散をちょっと知ったかぶりすると、SS(エスエス)と言います。 この通信方式は送信エネルギーを広い範囲(周波数的に)に拡散させるもので、見つかりにくく(秘匿性が高いと言います)、 また、妨害にも強い特徴があります。

さて、GPS衛星は何を送信しているのでしょうか。全ての衛星から送信している情報は同一で、 全部で37,500ビットを繰り返し送信しているデータ放送衛星です。 内訳は、30ビットのデータを10個まとめたサブフレーム、 これを5個まとめたものをフレームと呼び、25フレーム(またはページと呼びます)で一巡します。 データの送信速度は50ビット毎秒ですから、これら全てのデータを受信するには安定に受信しても12.5分かかる計算になります。 このデータはそれぞれの衛星からの電波から距離を求める場合に発生する誤差を補正するために使うものです。 軌道の誤差情報や衛星の健康状態などが送られてきます(衛星の暦情報をアルマナックと呼びます)。

地球の周りを11時間58分2.045秒で周回するGPS衛星は常に地球上の同じ場所の上空を通過するようにコントロールされています。 これらの衛星を3個所の地球局が監視し、軌道のずれなどの情報を衛星経由で送信しているわけです。 さて、この周回する時間がちょっと半端なのに気づかれたと思います。これの2倍の時間、23時間56分4.09秒が地球の自転周期、 私たちが1日としている24時間はこれに一日の公転分を加えたもので、地球の同じ場所が太陽の方向を向く周期になります。

さて、カーナビゲーションシステムのGPS受信機が正しい位置情報を出力するには、 衛星から送られてくる現在の衛星の状況を得てからでないと誤差が大きくなってしまいます。 しかし、順調に受信できたとしても全部の情報を更新するには12.5分もかかるので走り始めてすぐに位置を明確(測位と言います)にできません。 そこで受信機メーカーは工夫をこらし電源投入後最初に測位できるまでの時間をできるだけ短くするようにしています。 まず、製造直後の受信機にはその時点で得られる最新の衛星情報が書き込まれます。 また、受信機の電源が投入された時、 保存されている衛星情報が得られた時からどの位経過したかにより保存されていた情報が使えるかどうかを判断するようになっています。 すなわち、ひんぱんに使っている場合としばらく放置していた場合とでは最初に測位するまでの時間が異なるわけです。

GPSは地球上のいかなる場所でも位置を知ることができる唯一のシステムですが、 正確な位置を得るには少なくとも3個以上の衛星からの電波を同時に受信しなくてはならず、電源を投入した直後は正確な位置を知ることができないのです。 トンネルの中や地下駐車場、高速道路などの高架下など衛星からの電波が遮られる場所では測位ができません。 そして、より正確な測位を行うのは受信機に最新の衛星情報がある場合で、これには短くとも電源を投入して12.5分後になります。 最も正確な測位ができるのは受信する衛星が自分のいる位置から水平方向に3個が相互に120度はなれている場合で、 高度も必要な場合(3次元測位)は真上にもう1個の衛星が存在することになります。よくGPSのアンテナを車の中央に取り付けているのを見かけます。市街地では道路の両側に建築物が存在し、衛星からの電波を遮ります。よって、できるだけ道路の中央よりにアンテナを取り付けるのが受信障害を最小にする方法、すなわち、日本では車の右側にGPSアンテナを取り付けるのが正しいのです。

(達人)
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