こだわりの連載技術エッセイ
第2回 GPSって何だ?(1.GPSの歴史) 2003年4月4日

GPSとはGlobal Positioning Systemの頭文字で、正式な名称はNAVSTAR/GPSです。 このNAVSTARとはNAVigation System with Time And Rangingの頭文字(大文字の部分)をつなぎ合わせたもので、 このシステムの表向きの機能が盛り込まれています。さて、このGPSですが、みなさんご存知のように米国国防省の持ち物。 主目的は軍事で、かの湾岸戦争ではじめて使われ、その威力が全世界に知られました。 日本ではGPS=カーナビゲーションシステムという理解が強く、これは、GPSの平和利用の代表となるのでしょう。
このGPSについて少し理解を深めていただくことにしましょう。単純にGPSの恩恵を受けるだけなら知らなくってもいいことなのですが、 ちょっと、知識をひけらかしたいと思ったもので・・・。

GPSの構想は1970年頃に米海軍と米空軍で別々に発足したプロジェクトになります。 海軍ではTIMATION、空軍で621Bと呼ばれていたものです。これは今から30年も前になります。 この間の技術進歩、特にエレクトロニクスの進歩で受信機がこんなに安くなるとは予想もしていなかったでしょうが、 30年も前の構想がいまだに色褪せていないのは驚きと言えるでしょう。この二つの軍事目的のプロジェクトが一本化され、 NAVSTAR/GPSとなったのが1973年、実験の目的で衛星を打ち上げはじめたのが1978年からになります。 計11個の衛星が打ち上げられましたが、使えたのは6個、この衛星を使い実験が行われました。 そして、実用衛星を打ち上げようとした矢先、1986年1月のスペースシャトルチャレンジャー号の事故。 当初、GPS衛星はスペースシャトルで打ち上げる計画だったため、大幅に実用の予定が遅れてしまいます。 最初の実用衛星打ち上げが行われ、成功したのが1989年2月、この打ち上げにはデルタロケットが使われました。

裏話になりますが、NAVSTAR/GPSは基本的に18個の人工衛星で地球上のいかなる場所でも正確な時刻と位置を認識できるようにするシステム (予備を含め24個で運用している)。これを逆さまに考えると、これらの人工衛星でいかなる地球上の場所を見ることができることになります。 GPS衛星には表向きの目的のための電波を送信する機能と赤外線センサーが搭載されているようで、 地球表面の赤外線の発生を検出してその場所を特定する機能があると当時の米国関係者から聞いたことがあります。 すなわち、地球表面での何らかの爆発、それを監視する目的がこのシステムにあった。 そのため、米国防省が計画する人工衛星打ち上げの中で優先順位が高かったそうです。

湾岸戦争が起こる頃、GPSはまだ完成しておらず、数個の衛星しかありませんでした。 そのため、GPSによる位置の確認(これを測位といいます)が出来る時間が限られていました。 1990年の秋頃からこれらの衛星の軌道修正が目立つようになりました。 そして、半年後の1991年1月17日に湾岸戦争がはじまったのです。この軌道修正は中東地域でGPSが使用できる時間が長くなるようにするものでした。 現在はすでにシステムが完成しており、世界のいかなる場所でもほぼ24時間測位が可能になっています。

湾岸戦争が起こった年の暮れ、1991年12月21日に旧ソ連が崩壊し、それまでの米ソ冷戦状態が消滅しました。 米国がNAVSTAR/GPSを開発していた頃、旧ソ連でもGLONASSというGPSとそっくりなシステムが開発されていました。 その後どうなったかは知りませんでしたが、GLONASSというキーワードで検索したところ、ロシアのサイトなどが見つかりました。 ロシアで健在のようです。ちなみに、GLONASSとはGLObal NAvigation Satellite Systemの略とのことです。

(達人)
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